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連載インタビューvol.22
松岡 知子(まつおか ともこ)XリーグのクラブハスキーズチアリーダーズDiva出身で、オールスターチームのVENUSでも活動歴のある松岡さんが、ご主人の転勤でフィリピンに渡ったのは6年前。慣れない海外生活と二度の出産を経て、今年1月、指導者としてチア活動を再開した。指導者としてはまだ新人で、しかも海外という特殊な環境でチアを教える難しさを抱えた彼女は、いま何を思い新たな挑戦に挑もうとしているのか。
 
“きっかけ”を作る習いごと
 
A. 最初は、子ども二人の子育てが忙しく、ほかの事をする余力はとてもじゃないですがありませんでした。けれでも、上の子が5歳、下の子が3歳になり、自分のためにも少し時間が取れるようになったので、「何か出来ることはないかな」と。それで、「自分が何より好きなチアを通じて社会と関わり、誰かの役に立てるような活動ができないか」と思ってクラスを開きました。

Q. クラス構成はどのようになっていますか?

A. 現在は幼稚園と小学生の2クラスです。レッスンは週1回・1時間。どちらも定員の15名で活動中です。日本語でレッスンをしたかったので、日本人を対象に宣伝したのがクチコミで広がって、ロシア人、インド人の子どもが参加していましたが、現在は日本人だけです。ただ希望があれば、外国人も受け入れています。

Q. スクールのコンセプトは、どう考えていますか?

A. 駐在員の家庭の子どもが多く、いずれみな日本に帰国してしまう。「チアとは何か」や、厳しさの先にある本当の意味での楽しさを学ぶには時間が足りないけれど、フィリピンでまずチアを好きになって、帰国したあと本格的にチア活動を続けてくれれば良いな、と思っています。「将来、チアを本格的に学ぶための準備や最初のきっかけ作り」がわたしの使命かな、と。
あとは、精神面も大切にしています。こちらの習い事は全体的にゆるいので、日本人らしい礼儀作法を重視して指導しています。ただ、どこまで厳しくして良いのか判断が難しい場合も少なくありません。生徒さんの大半は、同じ学校なので、「お友達がやるからわたしも」というノリで集まってきています。きっかけはそれでも構いません。ただ、日本のように最初から「チアをやりたい!」という子は少ない。中にはあまりモチベーションが高くない子もいたりします。そうなると注意しなければいけないことも出てくる反面、厳しくし過ぎると続かなくなってしまう。そのさじ加減が難しいですね。 子どもにとって私のスクールは、あくまでチアの第一歩。まずはチアを好きになってもらうことを大切にしないといけない。そのあたりのバランスをとりながら指導しています。


Q. 現在はどのような活動をしているのですか?

A. 年に2回、日本人コミュニティーの中で大きなお祭があるので、そこで発表の場を頂いています。練習だけでなく、発表する喜びを知ってもらい、もっともっとチアに興味を持ってもらえたら、と思っています。

Q. 松岡さん自身が、チアを始めたきっかけは何ですか?

A. わたしがチアを始めたのは、大学を卒業してからだったんです。元々、踊ることは大好きでしたので、普通にOLをしながら、会社のあとにダンススクールに通っていました。そんな時、当時お付き合いしていた主人のアメフトの試合を観に行く機会があって、初めてチアを間近で観て衝撃を受けました。そこから、アメフトのルールは主人に教えてもらい、チアも覚えて……という感じで勉強して、ハスキーズのトライアウトを受け、合格。それが私のチア活動のスタートでした。

Q. 2004年にはVENUSにも選ばれました。

A. VENUSで過ごした1年間は人生の大きな転機になりましたね。メイクの方法から立ち居振る舞いのすべてを教わりました。それまでの自分の甘さをさらけ出し、見つめなおす時間になったと思います。“女性としてどうあるべきか”とそれについていけない自分自身との間で葛藤の日々で、楽しいだけでは駄目、みなの憧れの存在という立場にいる以上、それ相応の責任を背負わなければいけないということ痛感しました。
 
生徒も自分も、さらなる成長を目指して
 
Q. 指導者としてはルーキーになりますが、指導する上で「難しいな」と感じるところは?

A. 幼稚園クラスは、チア以前に、整列できない、起立できない、止まれない(笑)。まだそういう年頃なので仕方ないのですが。そこで、まずは学ぶ姿勢・雰囲気を作るようにしています。小学生クラスは、入れ替わりが激しいため、年間を通したレッスンスケジュールが組みづらいことです。できるだけ柔軟に対応に対応できるよう考えています。

Q. 今回、帰国中にキッズチアのレッスンをいくつか見学されたそうですが、どんな点が参考になりましたか?

A. つくづく足りなかったな、と気づかされたのが「子どもたち自身に声を出させる」ことです。それは、わたし自身が現役時代、ハスキーズというダンスを中心に活動するチアチームにいたので、純粋に応援という形でのチア経験が浅かったことも影響しているのかもしれません。でもチアの原点は、誰かのために応援すること。応援するために、元気の良い声は不可欠ですよね。そのあたりがすごく徹底されていて、とても参考になりました。フィリピンに戻ったら、まず、「子どもたちに、元気の良い声を出してもらう」ということを目標に、レッスンしていこうと思います。

Q. 最後に、今後の夢や目標について教えて下さい。

A.「チアを好きになってもらって、日本で本格的にがんばって欲しい」という信念だけは曲げず、指導してゆきたいと思います。わたし自身も、いずれ日本に帰ることになると思います。子どもたちだけでなく、私自身、いずれは日本で、本格的なチア指導活動ができるようになることが夢です。子どもたちと一緒に成長し、今回、日本で勉強したことを元に、子ども達に大きな声を出してもらうなどの改善をし、そして、誰かを勇気づけ、自分自身も成長する本物のチアリーダーを育てられる指導者になれるよう、頑張ってゆきたいと思います。
(取材・文/会津泰成)
 
【 取材後記 】
松岡さんは「始めるのは遅くても、信念と努力があれば、充分にチアリーダーとして活動できることを子どもたちに伝えたい」と話した。スタートが遅れて苦労した分、自分が成長する喜びを人一倍経験した。そんな松岡さんだからこそ出来る指導や伝えられるスピリットは必ずあるはずだ。
 

 

松岡 知子(まつおかともこ)
7月8日生。兵庫県出身。
Xリーグ クラブハスキーズチアリーダーズDivaで活躍。2004年XリーグオールスターVENUS選出。社会人バスケットボールチーム アルファーズ専属アルファガールズでも活動。ワンナイスーパーライブ他イベント多数参加 。 2005年に現役引退直後、夫の赴任に伴いフィリピンに駐在し現在に至る。2児の母。
2011年1月にフィリピンにてチアダンスチーム「チアベリーズ」発足、指導。
 
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