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連載インタビューvol.15
いまできることレポート 東北関東大震災チャリティレッスン By 堀池薫子
 
いまわたしにできること——。
いま日本中の人がこの言葉を胸に、復興に向け動き始めている。被災した原子力発電所による放射能汚染、食料を中心とした物資不足、夏場に向け危惧される電力需給問題など、解決しなければならない事は山積したままだ。しかし俯いてばかりいては何も変わらない。前を向き、明るい未来を信じて動かなければ、幸せは永遠に訪れないのだから。
チアの世界でもまた明るい未来に向けて活動が始まっている。今回はその第一歩を踏み出したチアリーダーを紹介したい。
 
「できること」でみながハッピーに!
 
2011年4月2日——。東京・下北沢にある小さなダンススタジオで、チアのチャリティ・レッスンが開かれた。主催したのはNFLデンバーブロンコスのチアリーダーとして活躍していた堀池薫子。スペースの関係で参加人数は10名に限られたが、熱と愛情のこもった実りあるレッスンになった。

「いまわたしができることは何かと考えた時、やはりダンスを教える事だと思いました。最初はこういう時期にレッスンはどうなのかと不安に思ったりもしましたが、思いやる心、貢献したい心があれば伝わるはず。きっとみながハッピーになれると信じて開催しました」

自身のブログで募集すると、すぐに心あるチアリーダーたちが集まった。レッスン前半は、参加者が2グループに分かれて「自分たちにできること」について話し合い、それぞれ発表した。
節電、節水、募金などいますぐ出来る取り組みから被災地での活動に繋がる中期的なもの、「3.11」という日を忘れないためにはどうすれば良いのかという長期的なものまでさまざまな意見が発表された。

「本来、チアリーダーは誰かを笑顔にしたり、勇気づけたりするのが使命。そこが単なるダンスとは違う所ですし、チアの魅力だと思います。女神のような女性をふやしたい。こういう時こそ、一人の女性として成長できる場を、指導者は提供していかなければいけないのではないでしょうか」

当初20分を予定していた話し合いは40分以上も続き、ダンスレッスンは50分足らずになってしまった。しかしチアは身体を使ったパフォーマンスを競うだけのものではない。こうした心を磨くレッスンが何より大切であり、本物のチアリーダーに不可欠な要素なのだ。

「わたしがNFLチアのオーディションに合格した時も、ダンスパフォーマンスが完璧だったかといえば、そうではありませんでした。なのになぜ合格できたのかと考えた時、やはりそこに情熱があったからだと思います。情熱が伝われば人は動く。そういう意味でも、今回はチャリティ活動としてだけでなく、チアリーダーのレッスンとしても、非常に有意義なものになったと思います」
 
ダンスに気持ちを乗せて
 
話し合いのあとのダンスレッスンでは、参加者はリリカル(歌詞に合わせた動きのダンス)チアに挑戦した。曲は『WE ARE THE WORLD』。今回は基本的に技術指導はなしで、自由に思いを表現する事だけに集中した。

「この振りは、上を向いて困難にむかう気持ちで……」

「この歌詞のパートは、落ち込んでも這い上がって、また落ちても這い上がる、といった気持ちで ……」

「ここにいる人、日本、世界が一つになるイメージで……」

「“YOU&ME”の8カウントの部分は、一緒に力を合わせていこうという気持ちをのせて、自由に踊ってみて下さい!」

堀池の熱のこもった言葉に、参加者たちもまた情熱に溢れたパフォーマンスで応える。そしてひとつの作品として踊り終えた瞬間、参加者全員の表情には自然と笑顔があふれ、拍手が起きた。そこには嘘や偽りのない、本物の心、本物のチアスピリットがあった。
 
チャリティレッスンに参加して
 
最後に、チャリティ・レッスンに参加したチアリーダーが後日、堀池のブログに送ったメッセージを抜粋して掲載したい。
  • ★ 想像を超える大震災に、何ができるかもわからず月日が経つ一方でしたが、先生のチャリティレッスンに参加することで、自己満ではあるかもしれないけど、チアを通して被災者の方に支援ができて良かったです。
  • ★ 個人的には、日本経済が心配なので、もっと消費活動に励もうと思う一方、節電で暗くなった街や、家にいる時間が長くなった最近は、そんなに不都合ではなく、今までの日本が便利を超えて過剰だったのではないかと気づき、日本の価値観が変わるチャンスでもあると思っています。経済の発展よりも、大切なものがあるかもしれないです。
  • ★「チャリティチアレッスン」は誰もがHAPPYになれる、すごく幸せでムリのない形のチャリティの方法だなぁと思いました。他の参加者の方々と「自分達ができること」について話す機会があったのもとても有意義でした!
  • ★ 誰かと思いを共有することで、意識が高まったと思います。また、普段のときも非常時も、周りの人を励ましたり思いやったりする「チアスピリット」がすごく大事だと改めて気付かされました。日本中のチアリーダーがちょっとずつ自分の周りを明るくしていくことができたら、結果的に日本が明るくなりますよね!
  • ★ ダンスを踊り終えた後、感動して泣きそうになりました。縁もゆかりも無かったはずのチアリーダーが薫子先生の声掛けで集まり、今回の震災について話合い、考え、実践し、薫子先生のダンスを心を込めて踊り、すると自然とみんなが一つになっていく・・・なんて素敵なんだろう、と。
  • ★ 踊ることって生きていく為に絶対必要なものではないけれど、こういう状況下でもチアができることへの感謝と、チアをすることで自分も励まされ、人を励ますこともできるのだなと思いました。
堀池そして参加者が踏み出した小さな第一歩。それは確実に大きな希望と明るい未来につながったはず。道のりはまだまだ険しいが、社会が少しでも前向きになれるよう、これからも折に触れて、心あるチアリーダーたちを紹介していけたらと思う。
   

(取材・文/会津泰成)
 

堀池 薫子(ほりいけ かおるこ)
6月3日生。香川県出身。神奈川県立厚木高校ダンスドリル部でチアダンスを始め、大学時代は立教大学体育会応援団チアリーディング部と厚木高校OGチアダンスチーム「クラッカージャック」で活動。大学卒業後はOLをしながらXリーグ クラブハスキーズに5年間所属。2003~2005年XリーグオールスターチアリーダーVENUS選出。2007年単身渡米して日本人として初めてNFLデンバーブロンコスチアリーダーに合格。3年連続メンバーとして活動後、帰国。現在は子どもから大人まで幅広く指導している。
http://kaoluco.net/
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