試合前のセレモニーで、他のチアチームと一緒にすばらしいパフォーマンスを披露したSparkles。しかし、その直後に思わぬミスをしてしまう。退場経路の動線を間違い、迂回するような形になってしまった。
「応援するのは当然だけれど、わたしたちはほんの少しでもお客さんやチームに迷惑をかけてはいけない存在なのよ」
「何度パフォーマンスを繰り返してきたとしても慣れては駄目。毎回、『初めてトライする』という緊張感を持ち続けなければ、お客さんに対して失礼だと思います」
終了後の控え室――。
福田、荒井の両指導者は子どもたちにそう話しかけた。ロスした時間はほんの十数秒だったかもしれないが、そうした細部にまで気を配りプロ意識を忘れずに行動して欲しいという願いが、二人の言葉に込められているのを感じた。
本来ならば次の出番(3回表終了時)に備えて休憩し、食事をとるはずの時間を返上して緊急ミーティングを開いた。
誰か気付いた人はいなかったのか。いたならばどう声をかけるべきだったのか。同じミスを繰り返さないためには何が必要か。など、みな自分自身の問題として受け止めて、自分の頭で考え、自分の言葉で意見を交換し合った。
3回表終了時のパフォーマンス。気持ちを引き締め直してふたたびグラウンドへ。今度はミスなく踊りきれた。ただ、間違わないようにという心配が強すぎたのか、どこか元気さが失われた印象を受けた。 スワローズ自体も先制2ランを浴びてリードを許すなど調子は上がらない。重い空気が漂った。
出番を終えて控室に戻り、次の出番の確認をする前にしばしの休憩。メンバーはようやく食事を取ることが出来た。その後は持ち寄ったお菓子を仲間同士で交換したり先生たちに配ったりして気分転換。子どもらしい無邪気な笑顔と明るい声が弾む。小さなチアリーダーたちは、ほんの少し普通の少女の顔を見せた。
7回表が終了し、いよいよレギュラーシーズン最後のパフォーマンスになった。
スワローズといえば『東京音頭』。曲に合わせてリズムをとり、透明の小ぶりなビニール傘を振り、盛り上げる。ようやく硬さも抜け、程よい緊張感を保ちつつ踊っているように思えた。セ・リーグ優勝を最後まで諦めずに戦い続けるスワローズの選手を応援したい気持ち、たくさんの声援を贈ってくれたファンやチアリーダーとしての活動を陰でサポートし続けてくれた保護者への感謝の気持ちを込めて、メンバーは、ありったけの元気と笑顔を届けた。
スワローズは中盤にいったん同点に追いついたものの、8回にふたたび2ランを浴びるなどして4対7で敗れた。
Sparklesは残念ながら、レギュラーシーズン最後の試合を白星で終えることは出来なかった。ただし12月4日にはファン感謝デーがあり、Sparklesも出演する予定だ。この日から数えて二ヶ月弱。子どもたちはどこまで成長できるか。チアスピリットを追い求め、神宮球場に集うであろう大勢のファンを楽しませることが出来るだろうか。
次回のDazzling Styleでは、2011シーズンの総括とともに、ファン感謝デーにかけるメンバーの思いを紹介したい。 |